BITTERSWEET FOOLS(minori)
イタリアの中部に位置する都市フィレンツェ。この大都市の裏社会で別々に生きる二人の男の許に二人の少女が現れる。
それはどこか穏やかで、それでいて騒動の絶えない日々の始まりだった。
新ブランドminoriのデビュー作。詳しくは知りませんが、原画の相田裕氏は同人で有名な方だそうです。ズバリ、その絵に惹かれて購入を決意しました。
初回特典はハイクオリティ版ムービー&ボーカル。後者の方は要するにムービーのノンクレジット版というやつです。
さて、新ブランドの初回特典といえば他にも忘れてはいけないものがあります。それはもはやジンクスに近いものがあり、残念ながらこのソフトでも破ることは出来ませんでした。
そう、バグです。それも選択肢でセーブしたデータが使えなくなる致命的なものなので必ず修整ファイルをあてる必要があります。ちなみに私のところではそれでもまだ不具合が残っていました。モジュール違反による強制終了、ロードしたときに次のシーンになるまで曲が鳴らない等。
システムが複雑なゲームという訳でもないので、これは少し多過ぎるのではないでしょうかね。
システムはオーソドックスなビジュアルノベル。説明書によるとインタラクティブ・ノベルとのこと。
物語は全20話。展開に変化はなく物語はほぼ一本道。選択肢はどの話数を見るか、そのために用意されているようです(恐らく一度のプレイで全てのエピソードを見ることはできません)。エンディングもほぼ共通で、いわゆるキャラ別エンディングはなし。
ゲームとして見た場合、このシステムはややツライですね。結末はすでにわかっているというのに間の物語を埋めるためにプレイするというのは、よほどストーリーが気に入っていない限り、作業的になってしまいますし。個人的には、それがわかって以降のプレイにはあまり意欲が沸きませんでした。
足回りは普通レベル。パッケージに「読む」ための機能を搭載、とあるわりには頼りない感じがします。
メッセージの読み返しはログアイコンで表示させますが、解除させるのに右クリックでは反応せず、再びアイコンをクリックせねばなりません。読み返し画面も10行ほどしか一度に表示されず、右側にスクロールバーがあるにもかかわらずホイールマウスに対応していないなど、不便な面が目立ちました。
シナリオは他社と比較すると結構、変わっています。主人公イコールプレイヤーではないためか、多人数交代制の一人称で書かれています。時には三人称になることも。「物語」を意識しているせいか、ゲームではあまり使われない漢字や比喩表現を積極的に使っています。
しかし、それが効果的かと聞かれれば素直に頷くことはできません。一人称の変わり方にあまりにも節操がなさすぎるのです。物語を楽に進めるためだけに人称変更しているように見えてしまいます。もう少し、意味を持って変えて欲しいように思いました。
ストーリーについてはプレイヤーが介入出来ないので単純な好き嫌いで分けるしかありませんが、個人的には物足りなかったです。幾度か危機に陥るのですが、ハラハラするような緊迫感がまるでなく、どうも予定調和という感じがしてなりませんでした。
全体的に、先を知りたいという欲求に乏しかったのもストーリーメインの今作には厳しかったように思います。
他にも気になったのはシナリオ中に「○○とそれからいろいろな話をした」というような記述が多く見受けられたことです。
出会ってから間もない頃というのは互いに対する情報が少なく、キャラクター同士が近づくためにはそれを埋めるための会話が重要だと思うのですが。
簡単に言えば「好きになる過程」が今作ではおざなりにされているように感じてしまうのです。
そのため、後半でヒロインと結ばれるシーンは違和感ばかりがありました。恋愛感情というより、物語の展開的に消去法で他にいないゆえに結ばれたように見えてしまうのですから。
それにしても、このゲームはやはりロリゲーなのでしょうか。男が全て体格のいい成人男子で女が全てローティーンというあたり強くそう感じます。もちろん、どれほど幼く見えようと設定上の年齢は18歳以上ですけどね(笑)。
CGはこれ目当てで買ったくらいですから非常に美しい仕上がりです。ありがちな言い回しですが、いい仕事をなさってます。
しかし、立ちCGには大きな疑問が。一部のキャラにですが、どう見ても縮尺があっていません。キャラ同士(猫も含めて)が同じ地面に立っているようには見えないんですよ。ていうか立っていません。
中にはイーゼルに向かって絵を描いているカットもあるのですが、これに通常の立ちキャラが表示されると、あら不思議。遠近感が構成されてしまいます(ただし、右側のみ限定)。狙ってやったのかはわかりませんが、かなり違和感を感じました。
音楽は「自然に流れているような音楽」がテーマのようですが、自然すぎて印象に残りません。けして低いレベルではないと思いますが、どうもCGとうまく連動していないような気がします。
まとめ。期待が大き過ぎたビジュアル先行作品。CG(原画)に対して他の要素がついてこれなかったように思います。メーカーコメントのプラットホームがエロゲーであるのはたまたま、というあたりにもなにか原因がありそうに思います。
お気に入り:あえて言えばレプレ
評点:65
以下はキャラ別感想。ネタバレ一応注意。
1、フランチェスカ
彼女たちの正体が作品のひとつの肝かと思っていたんですが、思わずため息が出そうなオチでしたね。オープニングの印象的な登場に比べて、その存在自体が肩すかしという気がしてなりません。
2、レーニエ
結ばれる前のパレルモのセリフが全てを物語っています。「君は障害でないものを勝手に障害と思い込んでいた(意訳)」。はぁ、なんか物語の全否定という感じがするんですけど。
3、アラン
エンディングを迎えてもどうしてティのことが好きなのか激しく疑問。状況に流されたようにしか見えないのは私だけですか?
アランだけに限った話ではありませんが、裏社会で生きていることに誰も葛藤していないのは奇妙な感じ。また、全員がいいひと過ぎることも。
4、ティ
なんというか非常に印象に薄いヒロイン。たった数行のコメントが思い浮かびません。でもヒロイン。
5、シエナ
素敵なおねーさん。しかし、20歳以上(たぶん)であるためか、Hシーンはなし。色々と冷遇されてるよなぁ。
6、レプレ
シエナ同様、Hシーンなし。納得いきませんよ! と激しく憤慨出来るくらいなら、このゲーム、もっと好きになっていたと思うのですが。本当に残念です。
他にもいますが省略。面白いことも書けそうにないんで。