朝凪のアクアノーツ(fizz)
眠れぬ夜の晩、あてもなく散歩していた慧本亜樹(変更不可)は不意に聞こえてきた歌声に惹かれて海辺へとやってくる。そこにいたのは見知ったクラスメイト朝凪深緒であった。
翌日、亜樹は深緒に詰問されたかと思うといきなりハンマーで襲われる。深緒の自爆によって実は彼女の正体が人魚であることを知る。すっかり逆切れした深緒によってどうしてだか亜樹はボディガードを務めることになるのだった。
fizzの新作は任侠と書いて「にんぎょ」と読む某漫画を彷彿とさせる設定のアドベンチャー。
購入動機は予約キャンペーン特典がどんななものか確認したいという完全なるネタ購入。他にはあまり期待することなく。
初回特典はドラマアルバムとフルカラーブックレット。予約キャンペーン特典はヒロインの水着がスク水になって日焼けあともつくスク水ディスク。
ジャンルは従来通りのアドベンチャー。
足回りはやや使いにくいです。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻れません。また、選択肢表示時にはアイコンからしか起動できない仕様です。ロード直後に使うことはできません。
カーソルが画面の隅に配されるとクリックによる反応がなくなってとても不便です。
シナリオは大きく2つに分かれています。具体的には人魚ヒロイン深緒に深く係わる2ルート(以下人魚ルート)と間接的にしか係わらない2ルート(以下間接ルート)に。前者はライター雪村戌氏に原画家闇野ケンジ氏が担当、後者はライター小野楽園氏に原画家水月悠氏が担当と完全な分業体制が敷かれているのが窺えます。シナリオの内容もそれぞれのライターで異なる特色を出そうとしているように見えました。良く言えばバリエーションがあり、悪く言えば同じ作品でする必要がないように感じます。
日常の掛け合いは盛り上がりに欠け説明的なセリフが横行。特に物語で重要でない各種の行事における会話は率直に言って退屈に感じやすいです。あまりヒロインの魅力を引き出しているとは言い難いように思います。笑いによる成分はかなり少ないかと。
2008年製としては共通ルートが非常に多いです。2周目以降は軽い暇潰し道具が必要なくらい。人魚ルートは特に重複が多く、片方をプレイすると残りは差分に感じられるほどです。
惹かれ合う過程は苦しい描写が目立ちます。人魚ルートは三角関係を扱っていて、それだけに通常よりもしっかりした描写が必要になりますが、上述したようにほぼ一括りでまとめられてしまっているので不十分。感情の機微が書けていません。間接ルートは描写こそほどほどですが、血の繋がりというわざわざ選択したであろうネタに対する意義が薄いです。
シナリオ全体において人魚の必要性がとても希薄に感じます。エロゲーという観点で考えても基本的にそのままではHできない設定であり、疑問を覚えました。
シナリオの締めくくりであるエピローグ描写がどうにも弱いです。尺が短い上に内容も詰まっていないので印象に残りにくいように思います。
Hシーンは各ヒロイン5回ずつ。特殊なものが「おまけ」としてクリア後に4つ用意されています。回数は多いですがHシーンへの導入イベントを考えるのが面倒なのか、人魚ルートでは1シーン終わってすぐに場所を移動して次のシーンへなんてことが幾度もありました。
主人公が普段とは違っておっさん化します。どうしてだかこんな時だけ自信満々です。
CGはパッケージによると和服と濡れ透け重視。海辺の夏の物語ということもあってヒロインはかなり強引に水浸しになるケースが多いです。原因を気にしなければ表現はなかなか悪くないかと。
立ちCGはイベントCGに比べると変化も少なく精彩を欠いている感があります。ポーズ変化の幅も少ないです。
Hシーンは上の2つに加えて半脱ぎ重視。純愛系にしてはなかなかのエロさ。ただし、闇野ケンジ氏は顔の側面から後ろにかけての角度のカットが苦手なようで、このあたりの出来はもう一歩というところ。水月悠氏は全体的に安定度が不足している感じです。
スク水ディスクのパッチを当てると条件通りにCGが変化します。Hシーン限定ということでもないのですが、なぜか反映されないカットがあったりもします。残念なことにCG鑑賞モードにおいても片方しか見ることはできません。もう片方が見たくなったらその度にパッチを当てたり外したりする必要があります。ちなみにサムネイル画面は変化しません。
音楽は場面に応じた曲が用意されていますが、聞き応えはもう一歩です。単独で聞くにはやや厳しい仕上がりかと。作中の舞台は田舎ですが、それを感じさせる曲作りはしていないようです。
ボイスは主人公を除いて名前のあるキャラ限定で用意されています。演技はヒロイン陣には問題ありませんが悪友キャラはちょっとクセがあるように感じました。
まとめ。オマージュ元にまるで敵わない作品。わざわざ用意した企画ならもうちょっと気概が欲しいところです。そのあたりを気にせずとも魅力とパワー不足のように感じます。萌えゲーか、読ませるゲームかハッキリしないところも弱点かと。
お気に入り:特になし
評点:55
このような状態なのでキャラ別感想はありません。