ALMA~ずっとそばに…~(Bonbee!)

 3年前に両親が他界してから兄妹2人きりで暮らしてきた十崎巧巳(変更不可)と由衣。互いが唯一の身寄りであること以外はごくごく普通の学園生活を送ってきた。しかし、不思議な雰囲気を持った転校生、荒良木円の出現によって何かが変わり始める。果たして巧巳が時折、見る夢が意味するものは。

 発売日告知から約2年。前作「Ribbon2」から約4年。ようやく発売されたBonbee!の新作。それでいてゲーム規模はお世辞にも大きいとは言えません。ホビボックス系列でなければありえない開発スケジュールです。しかも、自分のとこのゲームが完成していないのにシナリオライターがKeyに出向(?)するという珍事まで披露。とどめにそのシナリオライターがバイク窃盗犯に刺されて入院するという場外イベントが発生。エロゲー業界というのは本当に予想もしないことが起こりますね。
 購入動機は「Ribbon2」がわりと気に入ったから、かなぁ? なにぶん昔のことなので当時の動機は希薄になってあまり覚えていません。ああ、原画が気に入ったということもあると思います、たぶん。長々と待たされても買った理由はそういうメーカーだと熟知していたから、でしょうか。
 初回特典は主題歌のマキシシングル。残念ながら聞いていないのでフルバージョンなのかわかりませんが、特典としてついているくらいですからショートバージョンではないと思います。
 今作はやたらと箱がデカイです。そりゃもう無意味と言っていいくらいに。CDを縦に2枚収容する意味はどこにあるのでしょうか。

 システムはヒロイン選択型アドベンチャー。ポイントなのは場所選択ではないということ。よくヒロインの場所がひと目でわかる、なんて表現をするシステムがありますが、今作のはある意味でその上をいってます。画面上のヒロインのいるポイントは常に同じ。上から順番に(ヒロインのいる場所を示す)CGが簾のように並んでます。そして日々そのグラフィックだけが変わるというかなり思い切ったデザイン。これを潔いといっていいのかどうかは微妙なところ。
 足回りは取り立てて問題はなく。メッセージスキップは既読未読も判別した上で速度も早く、使い勝手も問題ありません。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。ホイールマウスにも対応。ただ戻れる量がそれほど多くありません。

 シナリオは待たされた期間をどうとらえるかによって評価が変わりそうなほど微妙。
 日常会話は明らかに潤いに欠ける印象があります。会話内容に意外性がまるでなく、繰り広げられるパターンがいつも同じ。セクハラ系悪友が気の強いヒロインにちょっかいをかけて鉄拳制裁。学園内ではエンドレスでこれが続きます。もうちょっと飽きないというか、読んでいてキャラに興味の持てる会話を望みたいところ。
 今作は平凡な日常が後半で壊れて……、という構成になってます。例えば「秋桜の空に」のような。このタイプは大きくふたつに分けられます。それぞれのシナリオで核となる特殊な設定を変えることなく共通させているものとそうでないもの。今作は前者に当たります。
 前者のタイプは設定を変えないことで、その設定を活かした重みのある雰囲気を作品全体に作り上げることができます。反面、シナリオの多様性が失われやすいので、どう区別していくかが問題です。なにせ終盤の展開がほぼ一緒になる訳ですから苦しくなるのは目に見えてます。
 で、今作の場合は残念ながらそれができていません。起こる出来事は基本的に同じでも、その後の展開にそれなりの工夫をしています。にも係わらず、どうにも似通ったシナリオという印象が拭えません。色々と理由はあるかと思いますが、その最たるものは前半部の弱さにあると思います。ぶっちゃけヒロインの魅力を描く日常にイベントが弱いという以上に、そもそも数がまるでなく、個々のアピールが絶対的に足りません。よって後半部に入った時にどんな展開になっても思い入れが不足していて「それがなにか?」という反応になりやすいです。ましてや今作は細部の設定がシナリオごとに違っているために、同じような展開であることに疑問さえ感じてしまいます。悪い言い方をすれば、時間があったのに手を抜いているように見えてしまうのです。正直なところ、全てのヒロインで共通させるほど大層な事実が隠されている訳でも魅力ある設定でもありません。
 先程、例に挙げた「秋桜の空に」の場合、やはり後半部に苦しさはありますが、前半部で遺憾なく発揮したキャラの魅力が牽引力となって最後まで読ませてしまう力があります。
 シナリオとしてあちこちに矛盾があることや設定のいい加減さ(しっかりと設定しきっていない)も気になります。加えて困難からの復帰が超がつくほどのご都合主義であることも。
 特定のシナリオについても疑問が。妹が実妹であるために当然、Hシーンがありません。安直でないのは結構ですが、「Ribbon2」からプレイしていた人間からすれば「またか」の思いが残ります。しかも、今作はヒロイン数が減っているんですからエロゲーとしてのダメージは大きいです。
 全体的にシナリオがやけにネガティブ傾向にあるのも気になるところ。ヒロインが怪我して大会不参加というのが2人3ネタ、交通事故ネタ多数というのはどうなのでしょうか。しかも、起こすだけ起こしておいて、ほったらかしなことも。
 テキストもあまり誉められません。バイクの排気音の表現が「ばるん、ばる~ん」だったり、やたらと半角文字を多用するあたりもどうかと。他にも劇中でテレビをつけると、それがニュースでもドラマでもなんであってもBonbee!の過去作(主に「Ribbon2」)を示唆するような内容ばかり。ファンサービスにしても行き過ぎのように思います。

 CGはなかなかに綺麗です。やや塗りが薄いような気もしますが、このあたりは好みでしょうか。発売までにかかった年数とか余計なことを考えず、ほどほどの開発期間で発売されたゲームだと思えば別段、不満もでないかと。
 立ちCGはゲームのボリュームを考えればわりと用意されているかと思います。ただ、キャラの反応がやや淡白であるような気がしますが。
 背景カットは良いものとそうでないものに差があるように思います。またモブキャラ原画と塗りがどうにもツライ仕上がり。

 音楽は全体的にパワー不足の感があります。中でもエンディング曲の印象の弱さは只事ではありません。余韻を感じていても醒めそうなほどというのはマズいと思います。
 ボイスはあまり聞いたことない声優陣が名を連ねています。それを示すように、なのかはわかりませんが、演技の方はほどほど。個人的には聞き続けていればやがて慣れるというような感じでした。まぁ、かつてはボイスなしだった訳ですから、あるだけで良しとするべきなのかも。

 まとめ。あらゆる意味において開発期間の長さに思いを馳せないこと。これがこのゲームを楽しむ最低条件です。ウン年もかけたんだからすごく面白いはずさ! とか考えるとアウト。個人的にはシナリオに粗も多く、設定も大変ありがちなので薦めはしません。
 お気に入り:お気に入りとかそういうレベルに達しておらず。
 評点:50

 説明の必要もないと思いますが、キャラ別感想はありません。日記の方で書きたいことはだいたい書きましたし。