秋空に舞うコンフェティ(etude)
うっかりノートや女の子を拾ったために災難に巻き込まれてしまう秋津隼人(変更不可)。廃部寸前の演劇部で結果を出すことを求められ、不吉な都市伝説とも対峙する羽目に陥ってしまう。
etudeの新作は演劇と都市伝説を題材にしたアドベンチャー。
購入動機はブランド買いというか、雰囲気買い。
初回特典はオリジナルサウンドトラック。予約キャンペーン特典はボーカルコレクションと追加でこずえディスク。
ジャンルは前作と同じく通常のアドベンチャー。
足回りはやや物足りない感じ。メッセージスキップは既読未読を判別して平均程度のスピードです。バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。
シナリオは全編通してとても薄いです。演劇にしろ、都市伝説にしろ、浅くすくっただけで分量的にも乏しく完全に説得力が不足しています。わずかでも流し読みしているといつの間にか障害を乗り越えているほど、そういっても過言ではありません。重要なシーンが抜けている、そう感じることが多かったです。
日常の掛け合いは潤い不足。キャラは古典的ながらもしっかりと個性があるのですが、それが会話に活きていません。中身がないのでちっとも記憶に残らず、笑いなどもっての外です。同様のことは小イベントにも言えてキャラクターたちと過ごす時間に特別さを感じることができません。
惹かれあう過程は全否定気味。初めて会う人間も含めて基本は最初から好き、なのですがテキストを読んでいてもそれがあまり伝わってきません。気がつけば両思いが当然という書かれ方をしています。普通に謎です。
Hシーンは各ヒロイン3回ずつ。ほぼ例外なく唐突に発生します。純愛ゲームとは思えぬタイミングとシチュエーションが多く驚かされます。ここでも尺は短くエロ度は期待してはいけません。
CGは本作で胸を張れる要素です。ワイドモニターに対応したCGは繊細で美しく実に見応えがあります。原画家の作風が少し変わっていますが、そこが気にならなければ文句の出ないレベルです。ただ、とても残念なことにシナリオとの連動性が弱く、出来の割にはインパクトに欠ける嫌いがあります。
立ちCGもイベントCGに遜色ありません。とても感情表現が豊かです。ただ、SD表現が美しい世界観と微妙に喧嘩しているように見えることも。
背景は人物に負けない仕上がりです。文章の不足を補うような、それほど多くはないカット数からも街の様子を伝えてくれるような存在感のあるカットが目立ちます。
音楽はCG同様に売りたりえる要素です。両特典内容が嬉しくなる、素朴ながらも雰囲気のある曲の数々は立派に作品の世界を構築しています。単体でも十分に聞くことができます。ただ、サントラのみならず音楽鑑賞モードでも一部の曲がショートバージョンしか聞くことができないのは残念(サントラの製品版があるから仕方ないとはいえ)。
ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技は基本的に問題ないものの、収録の方には一部で問題(消去し忘れ?)らしきものがありました。
まとめ。シナリオの大事さを再確認させてくれる作品。他がとても頑張って盛り上げてくれているだけに痛恨の事態。なんとももったいない限りです。
お気に入り:特になし
評点:55
以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。
1、奏衣
正体不明っぽいヒロインなんですけど、同居していることでミステリアスな面は鳴りを潜めてしまっています。せいぜいが飼い猫程度の謎度です。せっかくなんだから同居しているだけの意味というか、他ヒロインとの差別化ができていると良かったんですけれど。
伝承に対して1年程度で反応が起きるというのはいかにも無理があると思います。
2、安藤沙夜
垂れ化というのがどうも一人で世界を破壊しているように見えて仕方ないです。主人公も言っていましたが本当に違うイキモノみたいですよ。
ところで、このシナリオの願いってなんなんですかね。3年前はお父さんの病状の回復だった訳ですけど、今回は何かありましたっけ。というか、微妙に細部で奏衣シナリオとかを読んでいる必要があるような。説明がないまま進行する箇所があったような。
3、上城雪
「なんだ、リボンにはあんまり意味がないんだな」(うろ覚え)という主人公の身も蓋もないツッコミには完全に同意です。厳格な性格の人ならふざけているのかと一喝されそう。出会いのシーンといい結局、単に奇行に走る人に見えてしまうのがなんとも。奏衣といい、この雪といいキャラメイキングが昔のKeyの作品を思わせますね。
最初のHシーンのCG、リボンの色が違うような。
4、佐倉七海
こちらも同じアパート住まいというにはちょっとパワー不足。背景の力がなければとてもご近所さんには見えません。シナリオ間の被り描写がある割には同じ屋根の下で暮らしていることを実感させてくれるような場面は少ない。主人公とヒロインの距離感が誰相手でもたいして変わらないんですよね、このゲーム。