あいかぎ~ひだまりと彼女の部屋着~(F&C)

 大学推薦を受け、卒業をあと一ヶ月に控えた村瀬孝司(変更可能)。順風満帆とまでは言えないまでも穏やかな人生。だが、唐突に波瀾が起きた。理解者である父の死。主人公は何も実感を得ないまま、気がつけば姉の同級であった担任教師、葉月彩音とその妹、千香と同居することになっていた。

 鈴平ひろ氏のメイン原画第1弾。それゆえか否かはわかりませんが、それほど規模の大きくない作りの割にサブキャラを巻田佳春氏が担当しています。
 一応は鈴平ひろ氏のCG目当てに購入ということになります。言い換えれば、他に強烈な決め手がなかったということでもあります。

 初回特典(?)はCDサイズのミニマウスパッド2枚とアロマカード。前者はこのサイズのマウスパッドの使い道はともかく、CDケースに入っていてジャケットの役割も果たしているというのは良いアイディアかと。今までなかったのが不思議なくらい。
 後者は「こすると彩音先生の匂いがします」とか何か生々しさを感じさせることが書いてあります。つまりは先生の体臭ですか!? と反応したくもなりますが、「これが彩音先生の使っている香水です」と書くのも味気なさ過ぎですし、これがベターなんでしょうか。ちなみにこすらずともパッケージ内には少し匂いがしています。もし彩音先生の匂いが気になる方はお早めに。こういうのは時間と共に薄れていくものですから。

 今回はプロテクトがかかってます。そのため、インストール時にDISC1→DISC2→DISC1→DISC2という入れ換えを強制されます。最初の2回はわずかに読み込んだだけですぐに入れ換えの指示が出ます。誰もが自分のパソコンの調子やバグを疑うことでしょう。正規ユーザーに100%の確率で無意味な苦労を強いるのは勘弁して欲しいです。

 システムは平凡な場所移動型アドベンチャー。しかし、今の時代に珍しいことに行ってみるまでそこに誰がいるのかわからない仕様。個人的に経験が活かされないこのシステムは好きになれません。
 特定の日付までに一定の好感度を稼げればルート継続&分岐。それ以後も選択肢によってバッドエンドに辿り着くことがあります。F&Cにしては難易度は高めではないかと。
 足回りはいつものF&Cらしい作り。メッセージスキップはかなりの実行スピードなので使い勝手も良好。身勝手な要望を言えばウインドウでのプレイ時の非アクティブ状態でもスキップを継続してくれると嬉しいです。
 メッセージの巻き戻しはボイスも再生できるんですけど、驚くほど少量しか戻ることが出来ません。ほとんど1シーンくらいでしょうか。やはりもう少しくらい欲しいです。これだとミスクリックで1つ戻るくらいしか使い道がないような。
 CG鑑賞モードにおいて立ちCG及び背景も収録されているのは好印象。個人的には全てのゲームに備えて欲しいです。

 シナリオはキャラクターごとの差が激しい作り。メインとサブで区別されているのは原画だけではないようです。分量もレベルも大きな隔たりがあります。主軸が同居している姉妹との交流になる訳ですから、それ以外のキャラのシナリオで焦点がズレてしまうのは止むを得ないのかもしれません。つまりはシナリオの存在に疑問があるということですが。
 テーマとも直結する姉妹のシナリオもやはり微妙。最大の問題はどのような状況下にあっても主人公の言動が唐突に感じられてしまうこと。そこへ至るまでに主人公の心情がしっかりと描写されていればそんなことにはならないのですが、困ったことに完全に不足しています。
 感情の振れについてもほとんど書かれておらず、いきなり泣き出したりします。父の死のあとで、憧れの教師との同居を思わぬ幸運とか喜んでしまう有様ですし。パパ立場なさ過ぎ。
 書かれていないのは状況も同様。友人が登場してもそれに対する(主に過去の)説明がほとんどありません。その後の行動のみを書くことでキャラクターを表現するというのは事後承諾のようであまり良い印象を受けません。ゲームを進めていて唐突に先生が想い人とか言われても、プレイヤーはついていけません。
 日常会話も意図の分からぬ繰り返しが多いです。中でも主人公が家事を手伝おうとする→姉妹にやんわりと断られるというシーンが頻出します。聞いていると亭主関白とか家事は女性がやるもの、といったイメージが浮かんでくるのですが。この点について彩音シナリオにおいて「自由登校は今しか出来ないことをする期間。だから家事は自分や千香に任せればいい」という主旨の発言がありますが、千香も同じ学生という立場のような気がするのは私だけですか?
 シナリオ全体に言えることですが時間の経過がわかりにくく、かつ間のとり方が悪いです。「しばらく」の意味が一瞬だったり、シーンを切り換えたのに時間も場所も全く変わっていなかったり。
 最後に美人姉妹との同棲という設定で(1本のルートでは)複数回Hが姉のみ、それも少量では誰も納得しないのではないでしょうか。一応は複数あるんですけど、バッドエンドのように分岐した上でのHシーンしかないんですね。

 CGは原画家二人の間にレベルがあり過ぎ。立ちCGもイベントCGもそれは同じ。正直、同じ世界の住人には見えません。レベルだけでなく噛み合わせとしてもあまり良い選択とは思えず。さらに二人合わせてイベントCGが70枚に満たない(部分違い除く)のはどうかと思います。それでも目当てに買っただけに鈴平ひろ氏のCGはかなりポイント高いです。返す返すもこれで枚数が多ければ。
 立ちCGは股下まで描かれているので表情の変化が小さいですが、表情そのものはよく変わってくれます。
 背景はちょっと構図に工夫がなく、平面的なものが多いのが残念。種類も少なく、世界が狭く感じられてしまいます。「とらハ2」くらい屋内会話が充実していれば、それでもいいんですけど。
 オープニングデモは派手さは皆無ですが、作品のイメージがわかりやすく伝わってくる作りで好印象。歌詞も穏やかなところが二重丸。テーマの表現において本編よりも優れているとは言い過ぎですか。

 音楽はBGMに徹しているように聞こえるんですが、トラック5.の「青空の下で」だけは不自然に勢いがあって浮いています。他はよろしい感じなんですが。エンディングに「仰げば尊し」が使われているのは珍しいかと。
 ボイスもその他の要素に準じてます。つまりメインである葉月姉妹は安心して聞けますが、サブキャラは人により印象を左右されやすいのではないかと。
 男子キャラにもボイスあり。エロゲーに男の声は不要という方も個別にオフに出来るので安心です。

 まとめ。姉妹のシナリオだけなら及第点。それ以外は赤点。ゲームの規模も小さく誉められる点も少な過ぎ。購入はよく検討及び覚悟の上ですることをオススメシマス。
 お気に入り:葉月千香
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、葉月彩音
 この先生、意識しているのかいないのか、無意識で誘惑してくるので勘弁してくださいとか言いたくなります。結局、こうした態度が弟のように見ていたからなのか、男として見ていたからなのか、わかりませんでしたからねー。そのへんが重要な気もするんですが。
 しょうもないツッコミですが、先生は畳の部屋でもスリッパなんですか? 
 それにしてもいくら部屋着とはいえ、冬の格好じゃないよなぁ。ちょっと異常なくらいの薄着ですよ。普通は逆だと思うんですけどねぇ。
 過去に恋人と半年も同棲して処女というのはあまりにも無理があるのではないでしょうか。結果論としてはともかく、ちょっと信じられないのが普通じゃないかと。つーか、大概のユーザーもそこに希望を残してはいなかったんじゃないですかね。

2、葉月千香
 彼女の外出着はちょっとキメ過ぎではないでしょうか。商店街に行くだけであの格好はどうかと思うデスヨ。
 かわしまりのさんのどもりながらの演技がたいへん可愛らしいです。今までこういう役がほとんどなかったというのが信じられないほど、ピッタリと合っています。
 ただ、彼女のリアクションを見れば見るほど行く末が心配になります。どう見ても騙されやすそうです。佑希の言うことがすごくよくわかります。一人で大丈夫なんて信じられるはずがありませんよ。保母をしているだけでも毎日ハラハラしなければならないでしょう。

3、室井佑希
 かなりやかましいです。口数がそれほど多いという訳でもないのにうるさいイメージがあるというのが致命的。この方と3年もの間、友達づきあいするだけでも凄まじい気力が必要ではないかと。忍耐力養成要員。

4、山岸めぐみ
 メガネ教師。それだけで全てがどうでもいいです。プレイ後もその印象は全く変わりませんでした。私にはやはり天敵に当たるキャラです。