77~And,two stars meet again~(Whirlpool)

 天稜国際学園で年に一度、行われる星待ち祭。それは彦星と織姫を決める一大イベント。月城翔(変更不可)はひょんなことから彦星に選ばれてしまう。3人の織姫の争いの中で翔は選択を迫られていく。

 Whirlpoolの新作は諸般の事情で夢と消えた企画に代わるものとして生まれたアドベンチャー。ヒロイン多数ということで定価アップ。吉と出るか凶と出るか。
 購入動機は前作「MagusTale~世界樹と恋する魔法使い~」が一定の信頼を感じさせてくれるものだったため。
 初回特典はスペシャルコンテンツディスクとオリジナル原画集。予約キャンペーン特典はオリジナルボーカルマキシシングル。

 修正ファイルが出ています。あてなくともクリアは可能なようですが、そのままではウインドウサイズだけコンフィグの設定を記憶してくれないのでフルスクリーン派の人は必須です。

 ジャンルはごく普通のアドベンチャー。
 足回りはやや弱いところあり。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、選択肢間が非常に長いため相対的に遅く感じます。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。
 各種機能を使うことでシステムボイスが流れるのですが、ボイスの発声中だと消えてしまうことも。
 作品中の用語解説として77LIBRARYが用意されています。プレイ中も登録のタイミングを教えてくれるのでなかなか便利です。

 シナリオはメインとサブでくっきりと線引きがされています。織姫ヒロインがメインでシナリオの主軸に絡んでくる物語。星の巫女ヒロインがサブで設定を脇から支えるものだったり、主軸とは関係ない外伝のような物語だったりします。ボリュームの点でも差があり、メインのやや長めに対してサブは非常にコンパクトです。
 本作は設定とシナリオが喧嘩している格好。設定によって物語が大きく制限されていて、それはヒロインの魅力にも影を落としています。各シナリオを消化することで舞台の全貌がわかってくる作り。シナリオ重視の態でありながら実質、用意されているものは萌えゲーのようなテキスト。噛み合わないこと夥しいです。よって全シナリオに言えることですが盛り上がりに欠けます。
 日常の掛け合いは共通に限っては人数も多く賑やかですが、個別に入ると途端に登場しなくなります。中身も説明的なものが多くヒロインの個性を引き出しきれていません。
 惹かれ合う過程は設定すらも曖昧でゼロに等しいです。わずか数行程度の差異で好きになる相手が変わるなど主人公の節操のなさが目立ちます。エロゲーの常とはいえ、受け身で情けない主人公が10人のヒロインから無条件で好かれる姿は異様としか言いようがありません。
 Hシーンもメインとサブで明確な立場の違いがあり、各3回と2回ずつが用意されています。尺は短めでエロ度も低めです。

 CGもやっぱりメインとサブでハッキリ区別されています。メインがてんまそ氏で差分抜き76枚、サブが水鏡まみず氏で差分抜き45枚。合作が差分抜き7枚。そして、もはやメイン原画家と列挙されるほどの輝きを放つSDカットをこもわた遙華氏が担当して45枚。
 イベントCGは今回も変わることなく倍のサイズで描かれていて見応えあり。ただし、てんまそ氏デザインのヒロインは前作に比べて人数が減ったにも係わらず、見た目の個性やインパクトが弱くなったようにも。
 立ちCGは豊富に変わってくれますが、リアル等身のまま、輪郭の内側だけ(時にははみ出してまで)SDカットのようになるので違和感を感じやすいです。表情もやりすぎの感があり、こもわた遙華氏のSD表現が秀逸であるだけに良くない意味で目立ってしまっています。
 Hシーンは変わることなくオール半脱ぎです。しかし、その割にエロ度は弱く、回数ほどのものを感じません。

 音楽はボーカルを除けば全体的におとなしいです。お祭りという舞台に対して存在感の薄さは否めません。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技に問題はありません。

 まとめ。企画全体に空回りを感じる作品。値段だけバージョンアップして他は全てダウンしたかのような感触を受けます。売りに乏しく結果的に面白いとも言い難い。税込み1万円超でこれでは落胆は隠せないでしょう。どんな作品を作りたいのか、スタッフはもう一度、考えた方がいいかもしれません。
 お気に入り:カレン=ルクス=ヴィクトリア
 評点:55

 キャラ立ちも弱くシナリオも見所が少ないためキャラ別感想はありません。