全日本プロレス 王者の魂 
 

●プレイステーション用ソフト 

●1999年4月発売

●HUMAN(株)


 ファイプロシリーズでお馴染みのヒューマンが放つ、全日公認3Dゲーム!
 っつー事で、このゲームに関しては発売前から期待の声やら、悪名高いアイアンスラムをとらえてのキナ臭い話やらで、何かと話題になってました。特に馬場さんが亡くなってすぐの発売という事もあり、馬場さんの解説入りのこのゲームは、遺作のような形としても注目を集めました。さて、その出来映えは如何でしょうか……。

 そのまんま! 

 まずイヤでも目につくのはグラフィックの美麗さ(ハイレゾか?)。そのまんまやんけ!とかツッコミたくなるほど各選手を忠実に再現してます。パッと見はまさに実写。PSでこれだけのグラフィックが出せるという事実に素直に驚愕しましょう。そして『闘魂烈伝』は何をやってたんだ?と思いましょう。

 システム&操作性はどうか? 

 ハッキリ言うとダメな部類に入る。ボタンを押すとそのボタンに対応したクラッチ(例えばブレーンバスターに入る体勢とか、パワーボムを出す体勢とか)で組み付き、そこから各技を繰り出せるというシステムは斬新で悪くないが、その他の部分の操作性が実に悪い。
 例えば普通に立っていて、その周りを相手がグルグル回ったとしよう。通常のゲームなら相手の動きに合わせて自キャラの体の向きも自動的に変わるのだが、このゲームではそれがない。自分でキー入力をしないと、ずっと同じ方向を向いたままなのだ。するとどうなるか。あさっての方向に技が出る事が多くなり、ストレスが溜まる。しかもわざとそれを誘発させるような戦い方(技をくらわないためにグルグル回って相手の技をスカす)になってしまい、非常にお寒い試合に…。
 あと、選手がバテすぎ。技を出し続けるとバテてしまい、一定期間動けなくなってしまうのだ。一方的な試合にならないためのこのシステムが、必ずしも悪いとは言わないが、少なくとも『ファイプロS 』のように、呼吸を整えるシステムがあってもいいでしょう。しかも一旦バテバテモードに入ってしまうと、何がなんでもバテバテなのだ。相手の技を食らいまくってもバテバテ、相手のブレーンバスターを抜けてバックをとってもバテバテ。ヒドイのになるとタッグマッチで、タッチを受けてリングインした途端にバテバテ。一方的な試合展開にならないようにする工夫はいいが、キャラの動きを強制的に止めるという発想は、あまりにも短絡的だと思うのだがどうか。

 キュイーン! 

 このゲームの特徴の一つが魂ボタン。各選手に実力に見合う数だけの魂ボタンが装備されており(若手は2つ、トップ選手は4つって感じで)、このボタンを使用すると必殺技が出せたり、体力がなくてもフォールを返したりできる。このボタンを全部使いきらないと必ずフォールを返せるので、魂ボタンがあるうちは緊張感がないし、ボタンの削り合いみたくなってしまう。まあこの辺は好みの問題かな。

 ボリュームは? 

 各キャラに装備されている技数がメチャ多い。1キャラ分の技が、小さい文字で説明書2ページに渡ってビッシリと書かれている。1キャラの持ち技を覚えるだけでも一苦労。技が多すぎるってのも問題かも知れんね。
 登場レスラー数についてはどうかというと、とりあえず全日の選手はかなり充実。志賀や金丸などの若手から外人選手まで入っているので、全日ファンは納得でしょう。気になる他団体所属選手は、というと、ファイプロ名で少し登場するが、満足できるほどではないと思う。

 エディットは 

 全然ダメ。

 演出 

 若手と一緒に入場してくるシーンなどはかなり良い出来。観客のコールもばっちり再現されているし。ただ、試合中はあまり歓声もなく、臨場感や盛り上がりに欠ける。カメラワークもほとんどないので、試合中の演出はイマイチかな。それから実況者がだめ。ひどいしゃべりだ。日本テレビのアナウンサーではないらしい。素人じゃないのか?馬場さんの解説は正座して聞こう。

 はっきり言って 

 もったいないよね、このゲーム。発想や意気込みはいいけど、それがうまくゲームに反映されておらず、どこを取っても帯に短しタスキに長しという感じだ。もっと作り込めば、プロレスゲー史上に残るような名作になっていたかも知れないのに、つくづく惜しまれる。とは言っても、前述したように入場シーンや馬場さんの解説などはかなり納得の出来なので、全日ファンは必ずゲットしておきたい一本かも知れない。続編に期待しよう(出るなら)。

(99.6.8 ダーク)