□delay□minimal
Wayne Siegel
Autumn Resonance/Domino Figure
(PAULA,1983)PAULA 21(CD化は未確認)
ウェイン・シーゲルは1953年、ロサンジェルス生まれ。いわゆる
西海岸ポスト・ミニマル世代(カール・ストーン、ダニエル・レン
ツなど)の作曲家だが、1970年代からデンマークに居住している。
ピアニスト、パーカッショニスト、作曲家として活動。(経歴と以
下の演奏システムはこのアルバムの原文ライナーを参照した)。
このアルバムはアンビエントとミニマル・ミュージックの手法と音
響が高度に融合された傑作。「オータム・レゾナンス」ではデジタ
ルディレイ・システムの使用によって生成される両チャンネル間の
わずかな時間差を伴う音響が、スティーヴ・ライヒの初期作品のフェ
イズ・シフティングの手法を想起させると同時に、全体を通しての
響き、テクスチュアはアンビエントでもある。ピアノの音価の短い
フレーズが直後(0.187秒のディレイ)にプレイバックされ、一種
のカノン(フレーズの模倣)を生成する。音のブレが靄のように立
ちこめる音響というディレイ・システムの特徴が、ここでは全面的
に体験できる。中間部はスタッカートでタイトに刻まれるリズムが
ミニマル・ミュージック特有の快楽そのもの。
「ドミノ・フィギュアズ」は10人から100人での演奏が可能という
が、この録音では42人のギタリストによって演奏されている。90
に及ぶ旋律のパートを、半円形に並んだ演奏者がドミノ倒しのよう
に左から右へと旋律を受け継いでいくことで、これも一種のカノン
である。
理屈は抜きにしても、このほとんど無数とも聴こえるギターのパッ
セージの音塊はやはり、ゆったりとした、低く鈍く輝くやわらかな
響きを持っている。エフェクトに依らず、演奏形態によってアンビ
エントの響きを得ることに成功している稀少な一例である。
1999 shige@S.A.S.
・h o m e・
・ambient top・
・b a c k・