□minimal


Ingram Marshall
"Fog Tropes・Gradual Requiem・Gambuh I"
(New Albion,1988)NA002CD

cover

ミニマルとアンビエントの境界上にあるか、あるいはその両方の
音楽。フレーズはリピートし、それを深いリヴァーブが取り巻く。

このディスクでの「アンビエント」とは音色的な点から空間的広
がりを持つという意味にとどまらず、実際の環境音を用いている
ことも含んでいる。SEと楽器の音を融合させる際のマーシャル
の処理は素晴しい。トラック1"Fog Tropes"は「管楽六重奏、
霧笛と環境音のための」作品だが、繰り返される霧笛と管楽器の
音色の近似に着目して、楽器(内)と霧笛(外)とが緊密に融合
しながら立体的なサウンドスケープを構築している。

トラック2〜6の5つのパートからなる"Gradual Requiem"で
はシンセサイザーを背景としてピアノとマンドリンなどの弦楽器
が細かな旋律を繰り返す。ここでのアコースティック楽器にはディ
レイがかけられていて、短いフレーズが演奏された直後にプレイ
バックされる時に生じる響きのブレがにじむように広がる。特に
マンドリンはトレモロ奏法にディレイがかかるために一層響きは
細分化され、拡散していくことになる。この音の広がりは音楽の
フォーカスの拡散も意味することから、リスナーはスピーカの中
央を見つめるという、いわゆる「音楽的な」聴き方とはまた異質
の体験を得ることができる。

アルバム全体を通じて、環境音とエフェクトを通過したアコース
ティック楽器の融和が非常に際立っている。そして時折訪れるフ
レーズの連続による響きの形の統一・均質化によって、音楽全体
にアンビエント+ミニマルの両方の特質を与える結果となってい
る。


1999 shige@S.A.S.
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